東京・江戸川区の證大寺が、2016年10月、日本で初となる円柱のお墓「&(安堵・あんど)」の販売を開始しました。
急激に進む少子高齢化によって、先祖代々から続くお墓を維持できない。これまでの戸籍に基づく家族や家庭といった考え方には収まりきらない生活スタイル。そんな今の日本で暮らす人々のために生まれたというこのお墓。いったいどんなお墓なのでしょうか?
家庭の形を問わないお墓
現在、日本ではさまざまな家族の形があります。
少子高齢化、核家族化はどんどん進む中、単身世帯が増加するだけでなく、家族の形そのものも変化しています。
子供のいない夫婦だけでなく、親しい友人同士が暮らす家族、国籍や宗派、性別、間柄を問わない、運命のパートナーと共に生きていく。そんな戸籍上では家族と認められるのは難しいけれど、実際には家族という家庭のあり方も、人々の暮らしの中に浸透し始めています。
このような状況に合わせて生まれたのが、日本でも初の試みとなる戸籍が関係ないお墓、「&(安堵・あんど)」です。
「&」のどの辺が新しいの?
「&」が従来のお墓と異なるのは、これまでにない洗練されたデザインと、そのサービスです。
デザインは、余計なものを一切省いたすっきりした円筒形で、真っ白な大理石でできています。
大きさは直径20センチメートル、高さ120センチメートル。
この中に、契約の際に指定したお二人の遺骨が入ります。
お墓というよりはモニュメントで、お参りの時には大切な故人が眠る「&」を、「ぎゅっと抱きしめる」こともできます。
「&」をつくったお坊さんってどんな人?
このお墓を考案したのが、江戸川区にあるお寺、證大寺の井上城治住職です。
「これからの日本社会にマッチした新しいお墓が今、必要なのではないか?」というところから「&」を思いついたそうです。
住職の奥様も外国籍の方ということで、これまでのお墓をちょっと違った角度から眺めることで見えてくる、「二人の想いを尊重しつつ、残された方々への 負担がない新しい供養のスタイル」を形にしたお墓です。
井上住職のコメント
死について考えることは、一般的には後ろ向きに捉えられているかもしれません。 しかし死について考えることは、現在をいかに生きるかということに向き合う、前向きな事なのです。 私の妻は外国籍なのですが、これからの日本社会は外国籍の方と結ばれ、ともに暮らし、命を 終えていく方がますます増えていくのではないでしょうか。 また戸籍では他人でも、心でふかく結ばれている新しい家族のカタチもあるでしょう。 お参りをしたいという人の心は国や性別を超えて普遍なものですが、現在のお墓ではそのような方 には不便をおかけしているのです。 「&」は、二人の門出、旅立ちの記念碑です。 「死んだら、二人で生きていく」事を決めるのは、今を生きる現在のお二人ですので、そのような意味でも「&」は、二人の契りの標(しるし)とも言えるのではないでしょうか? 「&」はお参りを大切にしたお墓です。二人で選び、先に「&」に入った方は残された方を想い、残された方は先に入った方を想い 生きていく。「死んだら、二人で生きていく」ことを願いとして、いまを大切に生きる人たちのためのお墓です。