【映画】妻が死んで、一滴も涙を流せない男のラブストーリー『永い言い訳』公開

『ゆれる』『ディア・ドクター』『夢見るふたり』の西川美和監督が、自らの小説を映画化した最新作『永い言い訳』。

2016年10月14日公開されたこの映画。突然の事故で妻を失いながら、まったく悲しみを感じることができなかった夫が、同じ事故で母親を亡くした子供たちとの交流から、妻やまわりの人たちへの愛をはぐくんでいくお話です。

 

あらすじ

人気作家の津村啓こと衣笠幸夫(きぬがささちお)は、妻・夏子が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなった知らせを受ける。その時、不倫相手と密会中だった幸夫は、世間に対しては悲劇の主人公を装いながら、実は涙を流すことすらできない。ある日、妻の親友の遺族――トラック運転手の夫・陽一とその子供たちに出会った幸夫は、ふとした思いつきから幼い彼らの世話を買って出る。保育園に通う灯と妹の世話のため中学受験を諦めようとしていた兄の真平。子供を持たない幸夫は、誰かのために生きる幸せを初めて知り、虚しかった毎日が輝きだすのだが……

公式サイトより

 

 

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『おくりびと』から7年ぶりの映画主演。本木雅弘さんの演じる主人公はどんな人?

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主人公の衣笠幸夫を演じるのは、本木雅弘さん。「妻が死んでも涙すら流せない」ゆがんだ自意識とコンプレックスに溺れる小説家です。

妻の事故の連絡を受けたときは自宅で不倫相手と過ごしていたし、その死を知っても悲しむことすらできない男ですが、それがかえって人間臭いというか、かわいらしいというか。社会的には成功しているけど、ダメな人の、カッコよさがあります。

それと対照的なのが、竹原ピストルさんが演じる、大宮陽一。

同じ事故でやはり妻を亡くし、二人の子供を男手一つで育てていく、トラックの運転手です。

幸夫とは真反対に、配偶者の死を素直に悲しみ、それを隠すことなく表に出していきます。

 

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『よー、そこの若いの』や『TOKIO』のカバーなどでも話題を呼んでいる竹原ピストルさん。音楽、役者、そして絵画などさまざまな分野で活躍していますが、陽一役はオーディションで、満場一致で選ばれたそうです。

 

 

原作は西川美和監督の小説『永い言い訳』

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原作・脚本・監督のすべてを手掛けたのが、西川美和監督です。

原作の小説『永い言い訳』(2015年 文藝春秋)は、第153回直木賞、2016年本屋大賞の候補にもなりました。

人と死別するとき、中には後味の悪い別れ方を経験した人もいるはず。そんな「誰にも言えないような、苦しい関係の終わり方をした人の物語をいずれ書いてみたい」というのがこの本を書いた発端だといいます。

2011年の東日本大震災のあと、しばらくしてふと「メディアが伝える紛れもない愛に包まれた別れ方ばかりではなかったはずだ」と思ったそうです。

 

 

 『永い言い訳』はお葬式をどう変える?

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子供、嫉妬、居場所。戸惑いとともに感じる不安。

その物語はもちろん、役者たちの見せるちょっとしたしぐさ、表情が、本物の別れ以上にリアルな別れを描いています。

とても重くて、悲しいテーマだけど、観終えた後にはかすかな幸福感が残る。そんな映画でした。

 

このところ、お葬式を考える際のキーワードが、価格だけでなく個人らしさ、その人らしさがますます重要視される傾向があります。

その中で、従来のお通夜や葬儀・告別式だけでなく、お葬式の後に遺族や、故人と親しかった方が時間をかけて、「お別れ会」や「偲ぶ会」を準備するケースが注目されつつあります。

この映画の物語の中で、幸夫が陽一やその子供たちとの時間を過ごしながら、失った妻への想いを確認していく作業。そしてそれに続くラストのシーンなど、まさにそうした今の、お別れの姿を現しているように感じます。

 

本木さんが主演した『おくりびと』を機に、「葬儀社で働きたいという方が増えた」というように、葬儀という職業の周囲からの評価・見られ方が変わったというようなお話をよく聞きました。

『永い言い訳』は、お葬式にどのような変化をもたらすのでしょうか?

 

ちなみに、お葬式の模様を取材陣が囲んでいる場面など、本物の葬儀の取材現場を客観的に見るとこんな感じなんだろうなと、納得しました。

 

 

出演:本木雅弘 / 竹原ピストル 藤田健心 白鳥玉季 堀内敬子 / 池松壮亮 黒木華 山田真歩 / 深津絵里

原作・脚本・監督: 西川美和

製作:『永い言い訳』製作委員会(バンダイビジュアル株式会社、株式会社AOI Pro.、株式会社テレビ東京、アスミック・エース株式会社、株式会社文藝春秋、テレビ大阪株式会社)

原作:「永い言い訳」(文藝春秋刊) 挿入歌:手嶌葵「オンブラ・マイ・フ」

制作プロダクション:株式会社AOI Pro. 配給:アスミック・エース 

(C) 2016 「永い言い訳」製作委員会 PG-12

 

 

(小林憲行)

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