「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

父への手紙

お父さんへ

久保 統子(東京都多摩市)58歳

今まで病気一つしたことのない人が、ある日「座ると息ができない」と、寝付くようになり、とうとう二週間の入院で天国へ。
大正、昭和、平成と目まぐるしく世の中が動くなか、家族、兄弟のため、九十歳まで印刷屋をしてきました。
今のように、情報も簡単に手に入る時代ではありませんでしたが、人一倍苦労して、商売を続けてこられました。
皆あなたの心がけの賜物でしたね。
できそこないの子供達なのに、皆大学までやれることができて、本当に俺の人生は良かったとか、あの時は酷い事をしなくてよかったとか、威張って生きなくてよかったとか、そんな生涯を、毎日思い出しては話していましたね。
いつの間にか工場を片付けて、母が困らないように重要書類はベッドの足元にまとめられていました。いま、毎日感謝しております。
亡くなる四日前には「花が綺麗に咲いている」と、天国を下見して、二日前には皆に「何も困ることはないよ」と、にこにことしていました。
もうすぐあの世に行くとネズミがお昼に孫に知らせに来たり、葬祭場へ自宅から出るときは、涙雨をぽつりと私の頭に落として、お別れをしてくれました。
辛い時代も楽しい事ばかりを伝え、辛い寝たきりもわがままを言わず、本当に強い父でした。葬儀に来てくれた人々にも感謝され、残された者の心が穏やかに送れるようにしてくれました。


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