「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

友への手紙

親愛なる友に「ありがとう」

堀江 悦子(秋田県秋田市)74歳

ケアハウスに入居して三ヵ月が過ぎた。
私の無二の親友に、天から「よくぞ決心したね」と褒められそう。
その友とは趣味で知り合った三十年来の仲良し、共に伴侶を亡くして、よく生前の彼たちを語り、のろけたり、時には涙しながら、悲しみを分け合ったものだ。
優柔不断な私をいつも温もりで包んでくれながら、相談を持ちかけると笑顔で的確な答えを与えてくれた人だった。ひとつ年下なのにまるで姉のような存在だった。
二人で旅をし、ワインを飲みながら笑いこけた日々が懐かしい。
病と闘いながら、さいたま市の娘さんの家に移り住んだ。
それでも気丈な彼女は、娘さん達と大好きな旅行を楽しみ、秋田へ帰るとその折の写真を持って来ては、私の知らない世界へと誘ってくれた。

彼女の訃報が届いたのは昨年七月初め。ご長女からの電話は、悲しい知らせ。
私には全て信じ難いことばかり、まるで悪夢でしかなかった。

すでに布で被われたお骨箱――娘さん達の母を想う気遣いか? 布は、白ではなく、淡いピンクの優しい色であった――に納められ、色白の秋田美人さんは遺影となり、白百合の花に囲まれての帰郷であった。

ふた月程前に「また会おうね」と約束した筈だった。
「施設行きはよく考えて選ぶのよ」と色々アドバイスをしてくれた、さいたま市からの電話が彼女との最後の会話になり、今でも耳に残っている。
「おかげさまで今ここで快適に暮らしているから安心してね」と伝えたい私である。

先日ここへ、娘さんから、彼女が愛したパッチワークの遺作品二点が送られて来た。
針を持つ彼女の姿が浮かび、ひと針ひと針に込められた気持ちと配色の素晴らしさに、私は声をあげて泣いた。
掛け替えのない友を失った事をしっかりと受け止めた瞬間でもあった。

懸命に生きた友を見習い、残してくれた数多(あまた)の助言を頼りに、心細さに負けないよう、今、私は人生の最終章を過ごしている。


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