「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

父への手紙

「大丈夫」が今も聞こえる

照本 夏子(広島県広島市)38歳

お父さん。
私は、六年前にお父さんが突然の交通事故で他界した翌月の司法書士試験に合格して、今は司法書士として仕事をしています。
悠士が二歳になった時から勉強を始め、子育てと勉強との両立に自信を失いそうになる私に「夏子なら大丈夫」と声をかけ続けてくれたお父さん。
合格を一番に報告したかったお父さんは、合格を手にした時、そこにいませんでした。
小さい時から、人の倍以上の時間をかけないと目標を達成できない私に、お父さんは「夏子なら大丈夫」と、声をかけ続けてくれました。幼稚園時代の逆上がり、自転車にはじまり、小学校時代のそろばん一級のテスト、大学受験、そして司法書士試験……。努力しても一度でクリアできず落ち込む私に、自分の好きな登山になぞらえて、「山頂には回り道をしながら登る方が、色々な景色が見えていいんだよ。今は無駄に感じる道のりかもしれないが、がんばれ。夏子なら大丈夫」と声をかけてくれたお父さん。歯を食いしばって取り組む私の側に、そしていざ試験会場へ向かう私の側に、いつもお父さんはいてくれました。
人より時間がかかりながらも、私が多くの事をあきらめず達成してこれたのは、お父さんの篤い愛情によるものだと本当に感謝しています。
司法書士としての仕事に、子育てに、乗り越えるべき高い壁を感じることもたくさんあるけれど、本当に困った時「夏子なら大丈夫」というお父さんの声が、私の心によみがえってきて、私に大きな力を与えてくれます。
勉強を始めた時二歳だった悠士も、小学校六年生になりました。私と同じで目標達成になかなか時間のかかる息子です。
でも、私もお父さんのように、言い続けています。「悠士なら大丈夫」と。きっとそれは、今の私を支えているように、悠士を支える大切な言葉になってくれると思うから。


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