「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

祖父への手紙

伝えられなかった気持ち

あらいぐま(神奈川県川崎市)50歳

小柄だけれど、ハンサム。
口数は少ないけれど、いつもにこにこしていた。
お天気の良い日に、ふらりと自転車に乗ってやって来た。
お茶一杯分だけおしゃべりをした。
父の本を借りて「また」と言って帰った。
入院した時も、ふらりとやって来て、お見舞いに本を一冊置いていった。
後進の指導に熱心で、毎年農業高校の生徒さんを実習に招いていた。
同じ場所でアルバイトをしていた時には、忙しい時間になると必ず私の持ち場に手伝いに来てくれた。
何の気なしに「いつかお習字がしたい」と言ったら、子どもには不釣り合いなすばらしい硯箱をくれた。
山ほどいた外孫の中で、結構お気に入りでしたよね。私。
言ったことはなかったけれど、自慢でしたよ。あなたのこと。
実は、頑固一徹で気難し屋。
時折家人を困らせる人だった。
それを初めて知ったのは、あなたのお葬式がすんだという母の電話の後だった。
結婚して遠くに住んでいて、赤ちゃんもいたから、簡単には帰れなかった。
みんなが気を遣ってくれた。良くわかっている。
でも、お葬式で泣きたかった。
お世話になりました。大好きでしたと言いたかった。
最後のお別れをしていないから、いつまでも田舎にいる気がします。
生きていて、二度ピンチなことがあった。
そのたびに、夢枕に立ってくれた。
母のところにも来たことはないらしい。嬉しかった。
もう心配かけないように、幸せに暮らしていきます。
あの時赤ちゃんだったあなたのひ孫が二十五歳になります。本当にあっという間ですね。


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