「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

母への手紙

親愛なるままへ

秋田 瑞穂(大阪府泉南市)18歳

こんばんは。お元気ですか。
こんなことの答えを聞くことすら、もう出来ないのですね。
それでもやっぱり、しょっちゅうお手紙書きます。返事なんて来たことないけれど。
私、大学生になりました。まだ星を追い続けています。大好きな友達も、尊敬できる先輩達も、心から信頼できる彼氏もいます。でもね、私の隣で、輝く星々に夢中になるあなたはいない。
テレビの前の白いソファーや、入学式の保護者席や、結婚式の最前列に座るあなたは、この先ずっといないんだ。寝袋は私一人分しかないし、テレビを見ることはやめたし、入学式の招待状は一枚余ったし、彼を紹介することはない。
大丈夫。頭じゃ理解済み。
今年は今までよりも早く、母の日ギフトを売り始めていた。母の日の次の日には半額になっていたけれど。街じゃ赤いカーネーションが溢れかえっていた。ふむふむ、私は赤いカーネーションと白いペンキをセットで買うべきなのですね。
そんな世の中。ひねくれ者の私。あなたのようにまっすぐ生きたいけれど、どうすればいい?
これまでもこれからも、あなたは私の憧れの人です。
ほら、また涙が出てきちゃった。お葬式の時は一滴も流れなかったのに。もう私とあなたが一緒に生きた日々よりも、そうじゃない日々のほうがずっと長くなったのに。私の心はいつだって置いてきぼり。涙だって枯れないし。「なんでやねん」って笑っちゃう。
そんな私でも、この星で息をしている。あなたはどの星に住んでいるのかな、なんて。
さあ、馬鹿な私を叱ってよ!
そうだ、今日は私の夢を教えようと思っていたのでした。誰にも言わなかった私の夢。
それは、大好きな彼と結ばれて、シャガール達みたいに愛し合って、自分達の子どもと満天の星空を観ること。子どもに、あなたが教えてくれたように、愛を教えたい。あなたが教えてくれたように、笑顔の力を教えたい。そして、あなたが教えてくれなかった、涙の理由を教えたい。
叶えられるよね、この夢。だって、私、あなたの娘だもん。
それまで、笑って泣いて、生きていく。あなたがくれた愛に感謝して。


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