「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

父への手紙

喜山順徳居士様へ

西村 美智香(秋田県仙北市)42歳

父さん、その後いかがお過ごしですか?
調子はどう? この世からはそちらがみえませんが、そちらからは私達がちゃんとみえますか?
父さんが苦しみながら、自分の人生を小説にでもして書き残したかったなと言っていたから「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」っていう企画に挑戦してみるよ。
父さんに伝えたかった言葉、本の隅にでも載れたら本望です。
今日で父さんが旅立ってから二十六日経ちました。
天気は晴天で父さんが待ちに待った春がようやく訪れました。今年の冬は長く辛かった……。
母さんが毎日泣くから、私はなんだか我慢してしまって素直に泣くことが出来なかったけど、今日は泣けて泣けてしかたがありません。
涙が流れるたび、父さんの愛情の深さを感じています。
昨年の五月にがんが見つかってからは、父さんのことばかり気になる日々でした。
ステージ四の手術不可。私に出来ることはたかが知れているけど、何か出来ることを毎日必死で探してた。希望を持ってどんな状況でも前向きでいて欲しかったから。
そして、その日は無情にも刻々と近づき、誰も父の旅立ちを止めることはできませんでした。
父は七十六歳の誕生日を迎える二時間十五分前にあちらへ旅立ちました。
天寿を全うし、私達が見守る中、自分で逝くことを決めたのだと思います。
最後の最後まで父の勇姿は私に数えきれない学びを与えてくれました。
葬儀屋さんのお力添えで滞りなく、父を旅立たせることが出来ました。
父さん、どこまで行きましたか? もうどこも痛くない?
お寺の住職さんが素敵な戒名をつけてくれたよ。
喜山順徳居士。みんなに喜んでもらうことが大好きで、寡黙ながらとてもユーモアがあり、ずっと山に囲まれ暮らし仕事をし、大きくて、不動で、とても仁徳があった順英さん。
父さん、かけがえのないときを本当にありがとう。命を授けてもらい、可愛い名前をつけてくれて育て守ってくれたこと敬意でいっぱいです。
この世で父さんの子供になれて、家族でいられて、心からありがとうございます。
父さんのいないこの世には慣れそうにもないけど、きっとこれは終わりではなく、始まりなんだと思います。
父さんから受け継いだ尊い命をどう輝かせるか……。父さん、見ててね。
母さんのこともお任せあれ。
もう少しこの世での修行、頑張ってみるから。今度会える時はお迎えだけは忘れずに宜しくね。


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