「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

子どもたちへの手紙

残してくれた種は、花束にして

山下 惠子さん(51歳) 長野県安曇野市

「たーちゃん、いっしょにねんねしてよー」
入院していたときいつも言ってましたね。あなたのその声が今も聞こえてきます。
そして、入院したばかりで全く環境に適応できずに、昼夜逆転になって、毎晩のようにおぶって廊下を歩いたときの肩にかかった重みを、今も忘れることができません。
耳に残るこの声と肩に感じる重みは、あなたのいのちの叫びと重みだったのだと思っています。
莉絵、三歳で“さよなら”して十八年が経とうとしてますね。二十歳になったあなたはどんな娘になっているのでしょうか。
三歳の誕生日から一ヵ月あまりで亡くなることになるとは夢にも思っていませんでした。クリスマスまでは大丈夫ではないかと思っていました。
誕生日に撮った写真を見ると、自分のいのちの時を悟っているようにも見えます。とても三歳とは思えないくらい大人びていて、今も見るたび涙が出てしまいます。
あの日から頑張ってあなたの残してくれた種はなんだったのかを探しながら生きています。
まだまだ見つけられてない種がいっぱいあるような気がします。
今見つかっている種たちをちょっとだけ書きますね。
発病した時に気がついた種は、「病気になったときの家族の思い」「病気になった子どもの辛さ、痛み、苦しみ」「付き添っているご家族の思い」「看護師として何にもわかってなかったということ」。入院中に気がついた種は、「三歳にならないあなたが目の前にある辛い治療や検査を受け入れていく強さ」。さよならして気がついた種は、「我が子をなくした親の悲しみ」「孫をなくした祖父母の悲しみ」「人との出会いとつながりの大切さ」「周りへ感謝する気持ち」「うちの周りにある自然の恵み」など。
まだまだ気がついていないものがたくさんあるようです。
安曇野の冬の夜空に瞬く星ぼしは本当に綺麗です。莉絵もたくさんの人たちといっしょにお空にいるのだと思って見上げています。
私のいのちがある限り精一杯生きて、あなたが残してくれた種を育てて、たくさんの色とりどりの花束にしてあなたに会いに行きますね。それまで、ずーっと見守っていてくださいね。


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