「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

祖父への手紙

おじいちゃん、おばあちゃん、ありがとう!!

柘野 茂樹さん(67歳) 神奈川県川崎市宮前区

今から約五十年程前、私が高校へ入学したばかりの五月、最初の実力テストがあった。一週間程して成績上位三十位迄が廊下に貼り出された。私の名前もあった。帰宅してから祖父母に話したら大層な喜びようで私も嬉しかった事を思い出す。

父は、私が生まれて六十日目に病で亡くなり、母は実家に帰ったとの事。私は祖父母に育てて貰った。

中学迄こんなに喜んで貰った事が無かったので本当に嬉しかった。

小学生の頃、父兄参観日が私は嫌いだった。級友は若いお母さんが来るのに、私は年老いた祖母が来たからだ。私は、「これからは、来なくていいから…」と祖母の思いも知らず言っていたのを思い出す。子供とはいえ何と無慈悲な事をと思い出す度に辛く、申し訳ない思いに駆られる。

高校の成績順位表掲示を祖父母に話した翌日の事である。部活を終え、みんな帰った廊下を歩いていたら成績順位表掲示の前で一人の老人が手帳にそれを書き写していた。先生が通りかかり、その老人に「ご苦労様です」と声をかけていた。祖父だった。走り寄り、「おじいちゃん、こんな所へ入ってきては駄目だよ。すぐ帰って!」と声を荒げて追い返した。その時の祖父の悲しげな顔を思い出す。昨夜、あれ程喜んでくれた笑顔を見ていたのに…である。

祖母にも、祖父にも、懸命に私を育ててくれているのに何と無慈悲な事をしたのかと思う。祖父母は、こんな事があっても何も言わず私に両親のいない寂しさを感じさせない様に自分達の最善を私に尽くしてくれた。

祖父母に喜んでもらえたのは、二人の最愛の息子、私の亡き父が生前勤めていた銀行に私が入行した事、祖父母が殊の外、気に入ってくれた人と結婚できた事、そして、子供が生まれ曾孫を二人に抱いて貰った事だろうか。四十年程前の結婚式で、祖父は大声を張り上げて両家代表の挨拶をしてくれた。思い出す度に有難くて涙が出る。心を尽くして「ありがとう」を言っても言い足りない程である。

今、また言いたい。「おじいちゃん、おばあちゃん、本当にありがとう!」。「今も、あなた方二人が気に入ってくれた嫁が、毎日、お線香をあげて、手を合わせてくれているからね」。

あの世から、私達家族を見守って下さいね。


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