「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

家族へ・親戚への手紙

美代ちゃん

山田 和彦さん(65歳) 愛知県豊橋市

早いもので今年はあなたの十三回忌ですね。

梅雨明け間近のあの日、あなたの葬儀に従姉妹として出席させていただきました。死因は私の父同様、肺癌だったそうですね。病院にお見舞いに行ったときは、病気とは思えないほど元気そうに見えました。本当に残念です。そのときも妹たちのことを心配していたようでしたが、もう心配はいりませんよ。皆さん、元気でやっています。 それより美代ちゃん、あなたは死の直前、すぐ下の妹に自分の葬儀代、四十九日、一周忌、三年目と七年目の法要代として五つの封筒を渡し、この世を去っていったそうですね。妹たちはあなたの意志を継ぎ、お寺でしっかり法要をしていましたよ。

母親を早く亡くし、あなたは七人姉妹の次女でしたが、長女の敏子さんが大阪に嫁いだため、姉に代わりに妹たちの母親代わりに一生懸命でしたね。 市内のT銀行に勤め、同じ職場で好きな人もいたらしいですが、自分の幸せは求めなかった。末の妹が結婚し、いよいよ自分のためだけに生きられるとなったら、皮肉にも癌が見つかって入院することになり、こんな人生がこの世にはあるのかと思いました。

姉妹はあなたの葬儀を家族葬にしました。今思えば、私が子供のころ母が病弱だったために、実家でもある美代ちゃんの家に預けられ、家族同様に過ごした時期がありました。あなたは従姉妹なのに母親のような温かい感じがしていました。忘れもしないその年の夏休み、裏山で遊んでいるうち迷子になり、せんだんの木の下で泣いているのを見つけてもらいました。すでに辺りは暗闇で、冬だったら命の危険も迫っていたのかも知れません。命の恩人です。 「和ちゃーん」、今でも私を探すあなたの声が耳に残っています。

寺の本堂では静かに読経が流れ、一人ひとりが思いを込め、美代子姉さんの遺影に語りかけていました。最後に遠方に嫁いだ敏子さんの弔辞に全員が泣きました。 「美代子、ほんまにご苦労様。あんたばっかりに面倒見させて、あんたがよう頑張ってくれたおかげで妹たちも道を外さず、それぞれ家庭をもって幸せにやっている。天国でお父ちゃんやお母ちゃんに会ったら思いきり甘えていいよ。きっとあんたを抱きしめて、美代子ありがとうって誉めてくれはるよ」

姉妹たちは両親の眠る墓を取り囲み、いつまでも離れようとしなかったです。 こらえきれないように蝉も一斉に鳴きだしました。


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