「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

祖母への手紙

今は亡きおばあさん

井口 佐代子さん(55歳) 千葉県習志野市

おばあさんがいなければ、私はきっと下ばかり見て歩いていたと思います。
おばあさん、あなたは血のつながらない孫の私を、誰よりも可愛がって育ててくれました。脳性まひの障害を持つ私を。

私が生まれたのは、昭和三十年。その頃は産婦人科の病院にも保育器はなく、二千グラム以下で仮死状態で生まれた私を、誰もが生き延びるとは考えなかったそうです。そのことは何人もの親戚の人から聞かされました。
母が私によく言います。「母さんは、子育てを放棄したようなダメな親だけど、あんたを育ててくれたのはおばあさんだからね。そのことだけは忘れちゃいけないよ」と。
おばあさん、寝る間も惜しんで脱脂綿で私の口にミルクを運んでくれたおばあさん、ありがとう。本当にありがとう。おかげで私は今も元気に生きています。

私の人生には、おばあさんの想い出がいっぱいです。
小学校に入ったばかりの頃、言語障害のある私は学校でいじめられて学校に行きたくなくなりました。その時もおばあさんは私に言いました。
「佐代子ちゃん、いじめられたら泣いていてはいけません。殴られたら殴り返しなさい。
殴れなかったら、引っ掻いてやりなさい」と。
私は実践しましたよ。「酔っ払いみたいにしゃべる佐代子やーい」と囃し立てる男の子を、引っ掻いてやりました。その子が誰だったかは、今は思い出せませんが、その後はいじめられることは無くなりました。

八十八歳で亡くなる一週間前まで私にお小遣いをくれたおばあさん。
おばあさんがいてくれたから、私は自分の障害に負けないで、普通に生きてこられた気がします。ありがとう、感謝です。
いつかまた天国で会いましょうね。


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