「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

友への手紙

遺してくれたもの

野良猫さん(28歳) 神奈川県横浜市

先生、中学の頃の私は、よりどころであるべき家の中が半ば地獄の様で、誰にでも牙を剥く野良猫の様に荒れ狂っていました。
父は既に家にはおらず、母は完全に放任し、私には手本となる大人が身近にいませんでした。

中三の時、あなたが私の担任になった事で、私はやっと道標を得ました。
恐れる事なく、真っ直ぐに私の眼と心を見つめ、必要とあらば大声で叱り飛ばし、褒めるべき部分は太陽の様な笑顔で褒めてくださり、愛情が欲しくて乾ききっていた私の心を潤してくださいました。

長年お会いしておりませんでしたが、末期癌を宣告された時、同窓会をやりたい、と先生がおっしゃいました。
痩せ細ってしまった先生に報告しました。
「先生、こんな私でも、まともな大人になれました、母になりました。今度、娘に会ってください」
「お前が幸せになって、本当に嬉しいよ。連絡くれよ、会いたいから」

日取りを決めた直後、体調悪化のため入院され、そのまま逝ってしまわれました。

後日、先生のお母様とお電話でお話をする機会がありました。
「あの子、皆の前では元気な顔をしていたけれど、私にだけ言うんですよ。お袋、皆、俺の事忘れてしまうんだろうなぁって」
先生は、私に、そしてきっと他の多くの生徒さんに与えてくださったものを知らずにいたのですか。

墓前でもお伝えしましたが、ここにもう一度、記させて頂きます。

先生、先生がおらんかったら、私はほんまに母親どころか、まともな人間にすらなれへんかったんよ。
周りを責めるのではなく、愛すべき自分になれるように、丁寧に自分と付き合えと教えてくれたんは、先生やんか。
ずっとずっと、今の私を創った土台は、大好きな大好きな先生なんよって、照れずに言うたら良かったね。


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