「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

母への手紙

母ちゃんありがとう

南 雅夫さん(60歳) 宮崎県宮崎市

お母さん、私はあなたの五男として生まれました。あなたが四十歳の時の子で、末っ子の私は、六年生まであなたの乳房をまさぐるような甘えっ子でしたね。学校から帰ると、「母ちゃん、十円!」と言って近くの駄菓子屋へ行き、お菓子を買うのが毎日の楽 しみでした。

六年生になって、私は友達と一緒に、新聞配達を始めました。
ある日、友達に誘われるまま、ある家の牛乳を盗んでしまいました。普段飲めない牛乳を二人でおいしく飲み ました。しかし、学校に行くと、今朝の行動に対する後悔が膨らんでいきました。帰宅 すると、堪らず、あなたに今朝の行動を打ち明けました。 あなたは、悲しそうな目で、私をじっと見つめていましたが、何も言わず正装に着替え、私と一緒に、そのお宅に伺いました。あなたは、畳に頭をこすりつけんばかりに謝罪しましたね。私は、その姿を見て、大粒の涙をポロポロと流しました。その家の方は、子供だから、そんな過ちもあるというようなことを言われて許してくださいました。

私が高校三年生の時、あなたは亡くなってしまいましたね。たんすの中にあるあなたの衣類を見る度、悲しくて何度も泣きました。
成人して、私は小学校の教員になりましたが、三十三歳の時、うつ病になりました。

知人紹介で岐阜のある山寺に二週間こもり、内観という修行をしました。修行の最終日、その寺の老僧が、「あんたは母に守られている。母は、つきっきりで、あんたを守り通しておる」と言われました。

あなたは、目には見えませんが、六十年間私のそばにいてくれて、私を守ってくださっていますね。そのうち、私もそちらに行きますが、そこでも母ちゃんの子として生きていきたいです。

【受賞後のお便りより】
賞状そして賞金をいただき、ありがとうございました。
学校を退職し、生まれて初めて、投稿しました。佳作にでも入ればと思って応募しましたが、まさかの銅賞で大変喜んでいます。
母あての手紙を書きましたが、年をとる程母の偉さ、感謝の念がつのってきます。
学はありませんでしたが、ミシンで洋服を仕立てるのが得意で、料理もいろいろと工夫して、食べさせてくれました。
十月に本になるということで楽しみにしております。
本当にありがとうございました。


母への手紙一覧に戻る