「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」作品集

母への手紙

グレープフルーツが実りましたよ

久保 ともえさん(59歳) 京都府京都市

お姑さん、あなたが種から育てたグレープフルーツが、たくさん実りました。畑の隅に植えてあるその木がグレープフルーツということは、あなたから聞いていましたが、本当に実ができるとは思ってもみませんでした。

でも、あなたが亡くなったその年に一個だけ実ができました。あなたが亡くなったのは、平成十六年の六月、 その年の十一月頃には、どこから見てもりっぱなグレープフルーツの実ができたのです。
もう少しいてくれていたら、実を見て喜んだだろうにと、家族のみんな悔しがっていました。

そして、その後は、全くできなかったり、二、三個できたりでしたが、昨年の秋、もう数えきれないくらい実りました。
枝もしなっていました。突然の大豊作、びっくりです。

皮をむいて食べてみましたが、やはり産地でできたものと違って、すっぱくて生で食べるのは、無理があります。
こんなにたくさんの実をほっておくのはもったいないので、ジャムにしてみました。
そうしたら、とってもおいしいジャムができたのです。

そのジャムを、いろいろな人におすそわけしました。
あなたがかわいがっていた姪の和子さん、私の東京のおばさん、私の友達・・・そして、あなたが亡くなった次の年に結婚した孫の致のお嫁さんの真代ちゃん。
みなさん、とても喜んでくださいました。

お姑さん、あなたは、いつも少々のことでは、怒らずいつもにこにこしていましたね。
結婚以来いっしょに暮していてどんなに助かったことか。
私が、仕事のことや子育てでイライラすることがあっても、温かく見守ってくれていましたね。
そんなあなたの人柄が、グレープフルーツのジャムをよりいっそうおいしくしてくれているように思えてなりません。
今朝もパンにこのジャムをぬって味わっています。
今日一日またがんばろうという思いになります。

お姑さん、ありがとう。
グレープフルーツの木、大事にしますからね。

【受賞後のお便りより】
この度は、拙い文に銅賞をいただき、ありがとうございました。
さっそく仏壇に入選のお知らせと賞金をお供えして、姑に報告しました。
遺影がほほ笑みながら、「よかったね。これからも、ささいなことにイライラしないで、ゆったりした気持ちで過ごしなさいね。」と、言ってくれているように思えました。
その後、ヨーグルトに、あのグレープフルーツのジャムをのせて食しました。
いつも以上においしく感じました。
夫も、「母のことをこんなふうに思っていてくれて、ありがとう。」と言って、喜んでくれました。
我が家にとって、この入選は、よい思い出になります。
ありがとうございました。


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