吉川美津子のお葬式あらかると

Vol.30 遺骨は海に撒いてほしい?

散骨葬儀やお墓のセミナーで話をした後、参加者から回収したアンケートを整理すると、「もっと詳しいことが聞きたい」「興味深い内容だった」など、関心度ランキング上位に常に食い込んでくるのが散骨について。特にここ数年、急に問い合わせが増えたような気がします。

散骨をしたいと希望する理由は「お墓がない」「自然に還りたい」などさまざま。中でも「のこされる人の負担を軽減したいから」という声が最も多いようです。第一生命経済研究所が行った2009年の調査によると、「お墓はいらない」と答えた人が全体の20%に達したそう。しかしこれはあくまで逝く側の意見。では、送る側の意見はどうでしょうか?

もし仮に「遺骨はすべて海に撒いてほしい」と故人の明確な意思表示があったとして、送る側の立場になったとき、その意思どおりに手元に何も残さずに海へ散骨出来る人はいったいどれくらいいるでしょうか?たかが遺骨、されど遺骨。送る側にしてみれば「すべて散骨してしまうのはあまりにも淋しい」という意見が大多数を占めているのが実情のようです。

散骨は法的にはどう扱われているのかが気になるところ。厳密に言えば、日本では散骨に関する法律は整備されていません。「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)が制定された1948年当時は、散骨のような葬送方法については想定されていなかったのです。1991年に関係省庁より「散骨は葬送ための祭祀として節度をもって行われる限り違法ではない」と発表されたあたりから、散骨がビジネスとして稼動しはじめます。
「節度をもって」の解釈ですが、少なくとも「遺骨は粉末状に砕く」「迷惑がかからない場所に撒く」などの配慮が必要だという意味。海水浴場や海産物の養殖場、他人の土地などでの散骨はマナー違反です。海への散骨の場合、花を束ねるリボンやセロファンなどは外し、できれば花びらだけバラバラにして撒いたほうが良いでしょう。
ところが最近は、配慮に欠けた散骨があちらこちらで見かけるようになりました。そのためいくつかの自治体では、散骨方法や場所を規制する条例が出されています。

散骨業者を選ぶ際は、費用や内容のほか、海の事情に精通しているかどうかがポイントになります。費用は、遺族の代わりに散骨する「委託散骨」、複数の遺族が一隻の船に乗る「合同散骨」、一組の遺族が一隻の船をチャーターする「個人散骨」かによって変わってきます。
できれば遺族が船に乗って、自らの手で散骨するのがベターですが、高齢者など船に乗ることが厳しい場合は無理をしないこと。船酔いが酷い人もあまりおすすめできません。美しいイメージのある散骨ですが、必ずしも海の状態が良いとは限らず、苦しい思い出で終わってしまう人も多いので……。


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