吉川美津子のお葬式あらかると

Vol.29 生きている両親に対して行うお盆行事「生盆」

盆踊り生盆(いきぼん)、生御霊(いきみたま)といわれる言葉を耳にしたことありますか?生きている両親に対して行うお盆の行事のことで、「今生きていることを喜ぶ」「お互いの無事を祝う」という意味があります。

お盆というと湿っぽいイメージがありますが、前年に不幸がなかった家では、お盆はむしろ親戚一同が集まるめでたい日。生盆の風習は、鎌倉時代から室町時代にかけて朝廷や武家の間で広まり、江戸時代になると庶民の間でも行われるようになりました。現代でも、一部ではありますが、しっかりと受け継いでいる地域や家があるようです。

 

生盆には子供から親に魚を届ける習慣があります。この魚は盆魚と呼ばれ、昔から山間部においてもカツオやアジなど海の魚が好まれていました。中でも全国的に最も用いられているのがサバ。背開きしたサバを塩漬けにして干し、それを2枚重ねて串に刺した刺鯖(さしさば)が特に好まれているよう。サバは塩蔵すると保存ができ、丸ごとさまざまな料理に使え、油がのっていて味も見栄えも良いことから、昔から重宝されていたのかもしれません。

 

精進落としこの盆魚を贈るの習慣は1838年に書かれた書物『東都歳時記』にも書かれています。ただその内容は「中元御祝儀菜荷飯・刺鯖を時食す」という一文にあるように、中元に贈られていたようです。中元は、道教の「三元説」のひとつ「中元説」に由来しているのですが、中元は旧暦7月15日にあたるため、日本では盆礼と中元の挨拶が次第に融合していきました。

 

盆魚を食べる日は、盆の始まりより終わりに食される例が多いようです。盆中は精進の状態になりますが、そのままでは日常の業務に戻ることができないため、落とす(精進落とし)の意味を込めて最終日に食したとか……。お盆に生臭物は贈らない習慣があるところもあれば、一方で生盆には親元に魚を持参して調理し共に食す習慣もあり、食材ひとつとっても、お盆スタイルは地域や家によって随分と違いますね。


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